【第1回】学業・アルバイト・サッカー 部活生とは違った立場でも上を目指す|関東社会人サッカー:横浜猛蹴FC(学生)

今回は、関東社会人サッカー2部リーグに所属する横浜猛蹴FCでプレーをしている本多康聖さんにお話を伺いました。茨城の伝統校、鹿島高校から神奈川大学に進学し、社会人サッカーの強豪、横浜猛蹴FCでサッカーを続けている本多さんに、進路を選択する際の葛藤や、社会人サッカーを通じて重ねてきた経験から学んだことなど、とても興味深いお話を伺ってきました。進路選択に悩む高校生、必見です。


プロフィール

本多 康聖/HONDA KOSEI  (2002年2月16日生まれ)水戸ホーリーホックU-15→茨城県立鹿島高等学校サッカー部→横浜猛蹴FC


なぜ社会人サッカーを選んだのか

石毛:では早速、お話を伺っていきたいと思います!よろしくお願いします!まずは、社会人サッカーを始めた理由について伺いたいと思います。
大学の部活動やサークルでサッカーを続けるという選択肢ももちろんあった中で、なぜ社会人サッカーを選択したんですか?

本多:結論から言えば、大学のサッカー部に入ることが出来なかったからです。高3の夏の神奈川大学のセレクションで落ちてしまい、春のセレクションは新型コロナの影響で行われないことになってしまいました。
元々、高校を卒業しても、大学の部活か社会人チームでサッカーを続けることは決めていたので、社会人サッカーを選びました。

石毛:やはりコロナの影響は受けましたよね。本多さんは社会人チームの中でもとてもレベルが高い関東2部リーグの「横浜猛蹴」でプレーをしていると思います。
この「横浜猛蹴」というチームを選んだ理由は何だったんですか?

本多:高3の時に、茨城国体で神奈川県の選抜チームが鹿嶋に来たじゃないですか?その時に、神奈川県の選抜チームに横浜猛蹴の選手がたくさんいて、横浜猛蹴というチームを知りました。レベルが高いところで挑戦したいという思いもあったので、茨城国体で神奈川県選抜の試合を見たことがきっかけになりました。

石毛:なるほど。確かに国体で間近に高いレベルの社会人サッカーを見ることが出来たのは刺激になりますよね
では続いて、高校時代、社会人サッカーに対してどういう印象を持っていましたか?

本多:正直、ただ体を動かしたい人が集まってサッカーをやっているというイメージでした。身近に鹿島さわやかFCという社会人チームがあり、本気でサッカーをやっている人もいるのは知っていましたが、昼間仕事している人が趣味程度でやっているというイメージはありました。

石毛:そんな中で社会人サッカーを選択することに抵抗のようなものはありませんでしたか?

本多:正直、抵抗はありました。抵抗があったからこそ、社会人サッカーについてたくさん調べました。できるだけレベルが高いところでやりたいという気持ちもありましたし、チームの活動の環境や活動の方針、運営など、出来る限りの情報を集めました。でもやっぱり、サッカーが好きで、部活に入れなくてもサッカーを続けたいという気持ちの方が強かったです。自分の心の中にある抵抗をなくすために調べたというのが正しい表現かもしれません。


実際にやってみて

石毛:では実際に横浜猛蹴に入って活動してみて、自分のチームにどういう魅力を感じていますか?

本多:横浜猛蹴というチームは、自主性で成り立っているチームです。スポンサーの話が外部から来てもチームの代表が断っています。スポンサーがつかないので、良い意味で、自分たちのやりたい放題です。チーム自体、本当にサッカーが好きで、本気でやりたい人の集まりで、メンバー1人1人が主体性を持っています。自分たちでチームを作り上げているという実感を持てるのは、魅力に感じています。また、大学のサッカー部は同年代の選手しかいませんけど、チームの中には自分よりも10歳以上歳上で、これまでいろいろな経験をしてきた選手もいます。そういった選手から色々な経験を教えてもらえることも大きいですし、何より、先輩方が必死に走って体を張っている姿を試合中などに見ると、同級生から受ける刺激とはまた違った刺激を受けます。「自分ももっとやらなきゃ」と感じます。

石毛:それは素晴らしいことですね。僕も社会人サッカーを始めてから、高校の時以上に、自主性や主体性の大切さは感じていますし、やはり社会人の方々から色々な経験を伝えてもらえることは大きいですよね。サッカー面だけでなく、サッカー外の部分でも、僕は多くの刺激を受けています。
では、逆に活動する中で、物足りないなと感じることはありませんか?

本多:はっきり言ってしまえば、お金の面ですね。スポンサーがいないので、お金がかかることは当然のことだし、仕方がないことだということは理解していますけど、大学生の立場からしてみれば、毎月部費を払っても、練習できる回数は限られるので、物足りないなと感じることはあります。しかしそれでも、社会人の人たちは、仕事が忙しい中でも、本当にサッカーが大好きで続けている人たちなので、練習の質は本当に高いと思います。実際に天皇杯でも、毎日練習している大学生をギリギリのところまで追いつめることが出来ました。量は足りないけど、質は高く出来ていると思います。

石毛:やはりお金の問題はどこのチームも抱えていますよね。
現状、活動は週に何回行っているんですか?

本多:平日は、火曜日と木曜日の週に2回活動日があります。しかし、火曜日は社会人の方々の仕事の関係でほとんど人が集まらないので、実質週1回です。

石毛:やはり平日の練習は人数が揃いにくいというのはどこのチームも抱えている事情ですよね。


サッカー・学業・アルバイトの両立

石毛:では、私たちは社会人サッカーチームの一員としてプレーをしているわけですが、フットボーラーである前に、私たちは学生です。学業はもちろん、アルバイトもしていると思います。このサッカー、学業、アルバイトの両立という面で、正直「キツイな」と感じることはありますか?

本多:その両立は、正直キツイです。(笑)                        高校時代から隙間時間を上手く活用にしなさいということはずっと言われてきましたが、その大切さを感じてます。ただ僕は、社会人サッカーをやっている以上、出来る限りサッカーを優先したいと思っているので、必要以上にアルバイトはしないようにしています。それでも、サッカーが好きな気持ちがなければ、このキツさは乗り越えられないと思います。逃げ道はたくさんあるので。サッカーを頑張りたいから、学業に関してもすぐに行動に移せます。サッカーが好きな気持ちや情熱が一番大切だと思います。


サッカーのレベル感

石毛:続いて、サッカーのレベル感についてお聞きしたいと思います。私たちは、高校時代にインターハイや選手権といった全国大会に出場することは出来ませんでしたが、いま所属しているチームには、そういった私たちが立つことが出来なかった舞台で戦ってきた人がいると思います。そういった人たちから「違い」というのは感じますか?

本多:止める・蹴るの基礎技術の高さは感じます。基本的なプレーを見ただけで、「この人めちゃくちゃ上手いな」というのを感じます。あとは、皆他の人には絶対に負けないというような何かしらの武器を持っています。そういう人たちを見てると、「そりゃ全国出るよな。」って感じますね。

石毛:確かに、自分たちよりも高いレベルでやってきた選手たちは、簡単なミスが本当に少ないですからね。改めて基礎技術の大切さを感じますよね。そんな中で、本多君は先日、天皇杯の予選に出場したと思います。天皇杯での経験を通じて感じたことについてお聞きしたいと思います。天皇杯を戦ってみての、率直な感想を教えてください。

本多:個人的には、もし自分が大学のサッカー部に入っていたら、こんなに早い時期に天皇杯という舞台を経験することは出来なかったと思っています。社会人チームは20人から30人という少ない人数の組織ですが、部活になると、大学によっては100人以上のところもあります。なので、監督であったり、指導者、評価をしてくれる人から見られる度合いは、社会人チームの方が多いというのがあります。そういった環境もあって、この時期に天皇杯を経験できたことは自分の中では大きなことですし、横浜猛蹴に入って良かったなと感じましたね。

石毛:横浜猛蹴に入ったからこそ出来た貴重な経験ですよね。天皇杯では、大学のサッカー部との対戦があったと思うのですが、大学のサッカー部との間に「差」というのは感じましたか?

本多:単純に、練習量の差は感じました。大学のサッカー部は毎日練習しているというのもあって、チームの連携という面では大学のサッカー部の方が上でしたね。ただ、練習量では圧倒的な差がある中でも、PK戦に縺れ込むまで追い詰めることが出来たのは、社会人の方々が持っているONとOFFの切り替えの上手さなどといった「質」の部分では、大学のサッカー部よりも勝っていたなと感じます。


これから

石毛:これまでは、社会人サッカーを始める前と、実際に始めて経験してきたことについてお聞きしてきましたが、ここからはこれから先どうしていきたいかということについてお聞きしたいと思います。
サッカー面や学生としての、これからの目標を教えてください。

本多:サッカーについては、サッカーを続けている限りは、一番上はプロということになると思いますけど、常に上を目指してやっていきたいなと思います。この気持ちは大学を卒業してからも持ち続けたいと思います。学生としては、大学サッカーはある程度サッカーが優先で授業が組まれたり、学科が指定されたりしているけど、僕たちは自分が選んだ学科で学んでます。なので、サッカーを頑張りたいからといって勉強を疎かにすることは絶対にしてはいけないと思います。サッカーだけやって生きていければそんなに良いことはないと思っていますけど、現実はそんなに甘くないので、今学んでいる建築の資格をしっかりと取るということを目標に、学業面もしっかりと頑張っていきたいと思います。


進路に悩む高校生に向けて

石毛:僕たちも経験してきた道なので想像はしやすいと思いますが、高校から大学に進学する際にサッカーをやってきた高校生が持つ主な選択肢は、大学の部活でサッカーを続けるか、サークル・愛好会などで続けるか、サッカーを辞めてしまうかの3つだと思います。そこに+αとして社会人サッカーという選択肢も持って欲しいと僕は思っているのですが、実際に社会人サッカーを選択した者として、進路に悩んでいる高校生に向けてアドバイスはありますか?

本多:僕も進路について悩んでいる時、初めは社会人サッカーという選択肢は持てていなかったし、社会人サッカーを選択するにあたって抵抗はありました。前提として、練習環境や頻度という面では、社会人チームは大学の部活には敵わないので、本気で上を目指してサッカーをやりたいのであれば、大学のサッカー部でやることを第一に選択肢として持って欲しいです。しかし、それが叶わなくなった時に、社会人サッカーを選択することで得られるものはたくさんあると思います。サッカー面でも、社会人としても様々な経験をしてきている方々と一緒に活動が出来るので、サッカー選手としても、1人の人間としても成長できると思います。大学のサッカー部で出来なくても、サッカーを本気で続けたいと思う人は、サークルだけでなく、社会人サッカーという選択肢を持って欲しいなと思います。


最後に

今回は、横浜猛蹴FC所属の本多康聖さんにお話を伺いました!
高校時代、共に鹿島高校で全国大会を目指して戦ってきた友人ということもあり、「取材」という形で会話をするのには少々違和感がありましたが、、、(笑) とてもリアルで、興味深いお話を伺うことが出来ました。ありがとうございました!                              共に戦っていた仲間が熱い思いをもって努力を続けている姿を見ると、とても刺激を受けますね。別々の道に進んでも、互いに刺激し、高めあえる仲間との繋がりを持てるというのも、スポーツの魅力の一つだと思います。こういった仲間の存在は、これから先も大切にしていきたいと思います!   

最後まで読んでいただきありがとうございました!