FC.BANDELIE 悲願の2部優勝・1部昇格 代表 岸幸太郎氏が語る、BANDELIEの未来、果たすべき責任。貴重な土日をサッカーに費やす意義はどこにあるのか。 | 東京都社会人サッカー

今シーズン、悲願の2部優勝・1部昇格を成し遂げたFC.BANDELIE。2部リーグ6年目にして、やっと手中に収めることが出来た悲願。チーム発足当初からここに至るまでの道のり、改めて実感した、社会人サッカー、BANDELIEの価値や魅力、今後の展望について、バンデリエの代表である岸幸太郎氏にお話を伺いました。
社会人サッカーは、ただの趣味ではない。ここで得られるものは、楽しさだけではない。この言葉にピンとこない人ほど、最後まで、必読です。

 嬉しいは嬉しいですが、それよりもホッとしている気持ちの方が大きいです。このチームは色々な人と創り上げたチームだし、バンデリエグループとしての組織であり、年々その輪がどんどん大きくなっています。では、その人たちにどのように恩返しをしていくかという点では、私自身も具体的にこうして恩返ししていきますというところがあまり見えていませんでした。そういった部分がある中で、こうして結果として返せたことは凄く大きかったかなと思います。あともう一つ、卒業していった選手、マネージャーも含めて、今シーズンを戦ってきたメンバーはもちろん、皆見えない努力をたくさんしてきたと思います。その中で、結果が出ないとやはり不安になるし、モチベーションを保つのが難しい部分もあるだろうし、そういったみんなの努力が結果として報われたという所で、ホッとしたという想いが大きかったです。

 あとは凄くワクワクしています。今後に向けてという所で、何か、何でも出来るんじゃないかな、というようなワクワクしている気持ちもあります。(笑)

 具体的に、過去の苦しい思い出が蘇ってきたというよりは、バンデリエとしてチームを立ち上げてから関わってきてくれたメンバーや、幹部として支えてきてくれた先輩だったり、そういった人たちが頭の中にバーっと浮かんできました。

   2016シーズン 4部優勝・3部昇格決定時

 それに、4部、3部と優勝したときのシーンも頭に浮かんできましたが、個人的には、中学・高校とレッズの下部組織在籍時代に、全国優勝したときの思い出が蘇りました。あの時は幸いにも、自分たちの試合の後にトップチームの試合があったので、何万人という観客がいる前で優勝をすることが出来ました。これはなかなか経験できる物じゃないと思いますが、あの時の光景というのも蘇りました。

 また、過去ではないのですが、未来のことも頭の中に浮かびました。遠い未来とかではなく、本当に5.6年後、今回以上に皆と喜び合えているシーンも浮かんできました。

 まず一つ、「重み」が違いました。責任の重みです。今年からパートナーという形で、一般的にはスポンサーという形でついて頂いた企業様があった中で、その分責任があるし、注目される度合いも高まるという点で、「重み」を感じました。この「重み」というのも、Jのクラブとは違って、自分たちがパートナー様に対して返せるものというのは、優勝したからどうというよりかは、バンデリエの価値、バンデリエとしての存在感という所になると思います。広告効果とか、そういう話ではないわけです。Jクラブなら、広告効果での価値の返し方になると思うし、それがクラブの運営費になっています。しかし、自分たちは自らが会費を払って、それで運営している、+αでパートナー様から費用をいただいているという形になるので、その分、重みは凄く大きい。パートナー様が離れていってしまうのであれば、それは自分たちに価値がないということなので、そういった意味でも、今回の昇格は今までとは違う「重み」があったと思います。

   2017シーズン 3部優勝・2部昇格決定時

 それにもう一つ、「喜びのベクトル」です。今までは自分もプレーヤーとして関わって試合に出ていて、自分が嬉しい、幸せという喜びでした。しかし今回は、自分がというよりかは、周りのメンバーが喜んでいる、嬉しそうにしている、応援に駆けつけてくれたネクロスのメンバーや、メンバーの家族の方々が喜んでくれているというように、周りに対してベクトルが向いて嬉しかったという気持ちでした。

 要因は大きく3つあったと思います。

 1つ目は、メンバーを信じ切ることが出来たということだと思います。これまでは、現場の中に入って、現場的な意見をすることが多かったと思います。シーズンの途中からは、チームを少し離れた中で、中途半端に意見をするのは良くないし、参加するのも良くないと思って、メンバーを信じ切ろうと割り切ったのは大きかったかなと思います。現場のことは現場の人が一番よく知ってるし、見えていないところから何か具体的なことを言っても、現場が納得しないことは多いと思います。基本的には、現場のメンバーを信じ、何か大きな問題が起きた時に、抽象的なことでもいいからアドバイスをするようにしようと心掛けていました。そういう意味で、メンバーを信じ切れたことは大きかったかなと思います。現場に任せたからこそ、チームの中心メンバーは自由に出来た部分はあったと思うし、逆にこれまで以上に責任を感じていた部分はあったと思います。そういった意味で、自分がチームから離れたことで、良い影響になった部分はあったのかなと思います。

    2023シーズン ミーティング風景

 2つ目は、先程言ったことと被る部分もありますが、何か問題が起きた時にケツを拭ける準備を常に出来ていた事です。

 3つ目は、口に出し続けたことです。みんなが覚えているかはわからないけど、キックオフミーティングの時に、「今年は行けそうな気がする」と言ったと思います。それを、今年はメンバーだけじゃなく周りの人たちにも言い続けていました。よく周囲の人たちから、「今年のバンデどうなの?」って聞かれるので、それに対して、「今年は行けると思います。」と言い続けたことは大きかったかなと思います。去年とかは、「行けるかも知れないですね。」とか、「行けそうな気がします。」みたいな感じでしたけど。(笑)もう本当に、根拠があるとかではなく、感覚的な話ですけど。(笑)

 先ほども述べた、「輪」が広がっている印象を凄く感じました。今までは、自分の彼女や奥さん、友達くらいまでの輪だったと思います。しかし、今はその輪がすごく広がったなと思います。例えば、会社の同僚、上司、両親、家族、自分たちと直接的な関わりがない人まで応援に駆けつけてくれて、そんな中で勝てたというのは凄く大きかったなと思います。

    2023シーズン 集中応援DAY in赤羽

 また、個人的にはスペリオ城北に勝てたのは凄く嬉しかったです。バンデとしてなかなか勝ててこなかった相手ということもありますが、僕が個人的にも、社会人1.2年目で所属していた「アローレ八王子」でも、スペリオにはなかなか勝てなかった。こういったこともあり、すごく目標にしていたチームでもあったし、運営の方々にも凄くよくしてもらってきました。ライバルでもあり、目標でもあり、凄く良い関係性を築いてこれたチームに勝てたというのは、非常に感慨深い部分がありました。

 想像していなかった部分で行くと、自分がピッチに立っていないというのは想像していなかったです。(笑)余裕で35歳くらいまでバリバリサッカーしながら仕事も出来るだろうと思っていました。(笑)その準備もしてきたつもりです。でもやっぱり、仕事や、子供が生まれたり、活動地域が自宅から少し遠いことだったり、色々な要因が重なって、物理的に難しくなってきてしまった部分はあります。この現状は想定していませんでした。正直、自分が代表で、自分が運営しているので、自分が参加しやすいようにしていこうと思っていたので。(笑)しかし、運営の世代交代だったり、組織全体のことを考えると、自分が自分がという部分は捨てていかないといけないので、そこは理解していました。それ以外は、イメージ通りに、チームとして成長してきているかなと思います。まぁ、もし自分がピッチに立っていたら、優勝できていなかったかもしれないし、結果的には良かったかなと思います。(笑)

 物足りない部分で行くと、若手の運営メンバーの不足です。世間一般的には、20代後半や30代の人たちは、まだまだ若いだろと思われるかもしれないけど、うちの組織が今後も長く続いていくことを考えると、20代前半、20代中盤のメンバーが、自分がというよりかは組織としてどうしていくかというような視点を持って運営に関わってくれる、そういう人を増やしたいです。いま運営をしてくれている20代後半から30代前半のメンバーから、この5年くらいで、いまの20代前半から中盤のメンバーに引き継ぐようなサイクルを創りたい。それを考えると、若手の運営メンバーが少し足りないかなと。

 もう一つは、組織の言語化です。今までは、チームとしての思いや理念を抽象的に掲げて、口頭ベースでバンデはこういうチームなんだよ、ということを周囲の人たちに伝えることが多かったと思います。しかし今は、パートナー様がついてくれたり、輪が広がって関わってくれる人が増えたりしてきたからこそ、バンデはこういう組織で、こういう価値があって、こういうのを提供できるよと言ったことを言語化する必要があると思います。これは、バンデとしての責任だと思うし、これをメンバー皆が、口に出せるようにならないといけない。この言語化というのは、今現状足りない部分というか、今後必要な部分だと思います。

 あと一つは、資金です。今のチームをそれなりに維持していくことが目的であれば、メンバーの部費だけでいいと思います。しかし、このクラブの魅力や関わる仲間を増やし、価値を広げていくとなると、新たな取り組みをしていかなくてはいけません。新たにチャレンジするところに対する投資は必ず必要になるという意味で、資金は必要かなと思います。

 1つは、自分の視野や価値観を広げることが出来るということです。普通は、家庭と学校や職場で過ごすと思います。これらは、同じような思想、年代、価値観、方向性を持った人たちが集まっている環境だと思います。しかし、バンデリエには普段とは違う価値観や考えを持った人が集まるので、そういった人たちに触れることで、自分の視野が広がったり、成長に繋がったりすると思います。普段の職場や学校、家庭では得られないものを、こういった第3の居場所で得られるというのは1つ大きな価値かなと思います。

     2018年シーズン イベント風景

 あとは、挑戦できる環境に身を置けるのも大きな魅力だと思います。というのも、色々な力を持った人が同じコミュニティに居るので、誰かに頼れば何かが出来るという環境があるということです。しかも、利害関係もない。同じ目的、ゴール、理念を掲げているけど、価値観や考えは違う仲間が揃っているので、自分が何かを本気でやりたいと投げかければ、それを本気で支援してくれる仲間はたくさんいる仮にそれが失敗して、「やばい、これじゃ食べていけない」というような状況になってしまったとしても、誰かが助けてくれる。ここに僕は凄く魅力を感じています。こういう環境があるから、いま色々と挑戦できているという一面もあります。(笑)

 あとは、自分自身の成長。バンデ、仕事、家庭と自分の居場所があって、バンデは第3の居場所と掲げているけど、バンデが第1になることもあります。色々な能力、色々な考えを持った人たちが居るので、そういった人たちと関わることで自分自身の成長に繋がっています。バンデで学んだことが仕事に活きることもあるし、奥さんへの対応の仕方に活かされることもあります。(笑)

   2018年シーズン イベント開催時集合写真

 これまで述べたことは、社会人サッカーの魅力と=にはならないかもしれないけど、バンデリエの魅力ではあると思います。社会人サッカーと言っても色々な理念を持ったチームがあるので、一概にその魅力や価値を言葉にするのは難しい部分もあるかなと思います。逆に、各チームが目指しているものが違うからこそ、それぞれのチームで得られる価値や魅力も様々で、色々な価値や魅力が混在していること自体が、社会人サッカーの魅力かなと思います。

 まずサッカー面で行くと、東京都NO.1で居続けることです。今現状はそこには居ないですけど、今後そこに辿り着いて、1部の上位に居続けることはここ数年で実現しなければいけないと思います。今年1部に上がって、すぐに2部に落ちてしまったら意味がありません1部の上位というところで継続することは1番難しいことだけど、1番重要なことだと思っています。そこに辿り着くためにどうしていくかという所はしっかりと考えていかないといけないけど、そこが1番大事であり、組織としての展望です。

 それに、社会人サッカーの魅力は伝え続けないといけないと思います。現状、J参入を目指すクラブが増えてきていることや、高齢化によって、アマチュア社会人サッカーチームの組織を存続できないというような事例が増えてきています。そこで学生チームが社会人リーグに参入して来たりしていますが、社会人サッカーチームの数は徐々に減ってきてしまっています。だからこそ、自分たちが価値を言語化して伝え続けることは必要だし、そうしていくことが展望でもあります。

 あと1つ、世代間は広げていきたいと思います。今は20代から30代までのメンバーしかいませんが、いま所属しているメンバーが年齢を重ねたときに、その年代に合わせた環境を作っていきたいと考えています。だいたい5世代くらいあったらいいなと考えています。20代、30代、40代、50代、60代と、その年齢だからこのカテゴリーに居なきゃいけないというような縛りはないけど、やはり年代によってライフスタイルは異なります。その年代のライフスタイルに合わせた環境は徐々に作っていきたいと思います。逆に、下の年代の育成チームも作りたいという話も出ていますし、バンデリエとしての世代間を広げていくことで、縦の繋がりや斜めの繋がりというのを広げていきたいと思います。

 共創しましょう。
 第三の居場所を。未だ見ぬ世界観を。
 そしてAI時代にこそ必要なリアルな人間との絆や想いの共有を。

 このバンデリエを立ち上げた理由の1つとして、「子どもたちにキラキラした大人の世界を届けたい。そして大人になることを楽しみに、夢や目標を持って全力で挑戦し続けてほしい。」という想いがあります。

 私はもともと教員をしており、その時に感じたのは、夢や目標を持っている子どもの少なさです。プロスポーツ選手になれるのはごくわずか、○○になるのはリスクがある、××は稼げない…など情報社会になったが故に、現実的な情報が子どもたちに届くようになりました。 

 また、日々のニュースでは、ハッピーな内容よりも犯罪、問題、炎上しやすいようなネガティブが多いです。そんな社会だから未来に対してわくわくした気持ちを持って挑戦する子どもが減ってしまう。我々大人が、キラキラと楽しんで仕事や生活を送ることで日本の未来は変わる。そのように考えています。

 子どものころから、チャレンジして失敗した数が多ければ多いほど未来は豊かになり幸福になることを体感してほしいです。そんな想いとコミュニティをこの組織から伝えたいです。

 我々は、サッカーというツールから始まり、今では500人以上の仲間/想い/価値/絆…を繋いできました。Jリーグを目指していないからこそ、地域拠点を一つに絞っていないからこそ実現できる第三の居場所を。未だ見ぬ世界感を。
 皆様と、築いていきたいです。

2023シーズン 2部優勝・来季1部昇格決定