5回目となった今回は、お笑い芸人でありながら、東京都社会人サッカーリーグ1部所属のIntel Biloba Tokyoでプレーしているお笑いコンビ放課後ハートビートの松下シュートさんにお話を伺いました。お笑い芸人という特殊な職業と社会人サッカーの両立の仕方やお笑い芸人目線からのサッカーを続けていて良かったことなど、普段とは違った視点から社会人サッカーについて詳しく知ることができる記事となっております!
プロフィール
松下シュート / Matushita Syuto / 1989年7月14日生まれ / 兵庫県出身
吉本所属 お笑いコンビ 放課後ハートビート(ボケ担当)
滝川第二高校 → びわこ成蹊スポーツ大学 → Intel Biloba Tokyo
吉本興業ホームページ 放課後ハートビート プロフィール|吉本興業株式会社 (yoshimoto.co.jp)
Intel Biloba Tokyoホームページ Intel Biloba Tokyo (intel-biloba.tokyo)
芸人を始めたきっかけ
幼い時から、人前に出て目立ったり、人を笑わせたりすることが好きでした。関西出身だったこともあり、小さい頃から「吉本新喜劇」「ごっつええ感じ」「笑う犬」などバラエティ番組が大好きでいつも見ていました。しかし、当時は芸人という職業を非現実的だと感じていて、芸人になることへの葛藤がありました。
大学3年生までは本気でプロを目指していて、自分の中で、せめてJFLには行きたいと考えていました。そんな中で大学3年生の時に、1年生に松田陸(現・C大阪)が入部してきたことで、ポジションを奪われ、現実を突きつけられ、プロへの道が消えてしまったと思いました。
4年生になり、自分のやりたい事を考えたときに「やっぱり人を笑わせたい。芸人になりたい。」と思い、芸人を志して両親に「俺は芸人になる。」と伝えたところ、その頃は就職氷河期ということもあって、親から「社会を知らないとダメだ。」と猛反対され、言い合いになりました(笑)。
それでもお笑いから離れたくなくて、始めはバラエティ番組のADになりました。芸人も見れるし、番組の作り方もわかる、ここでの経験は今でも糧になっていると感じます。数年働いた後も、芸人への熱は冷めずNSC(19期生)に入学しました。
ネタ作りでのこだわり
一番大事にしているのは、自分と相方(HIWAさん)じゃないと面白くならないようにしている点です。2年前のおもしろ荘のネタは、番組にも呼ばれやすいネタだと感じています。舞台を大きく使って激しく動いたり、1にも2にも個性を強く出すネタというのはM-1やABCのような賞レースでは不向きなのもまた事実。そこの覚悟を持ってメディア思考でやっています。
お笑いも出来て多方面に活躍して、タレント性のあるEXITなんかはすごい理想的です。今は、お客さんが入ることが少ないけど、お客さんの笑い声や大御所の人達が笑ってくれているのはとても気持ちいいです。
やりがい
これ絶対売れるやろ!っていうテレビの収録時の感覚です。
番組の取れ高に一喜一憂出来ることもやりがいになってきています。
二人とも取れ高のためなら何でもできるので、体を張るネタなどでは怪我のことを考えなく、どんどん提案できることも僕らの強みであり、やりがいに感じる部分です。
本当にすごいと思った・尊敬する芸人
ナインティナイン矢部さんですね。相方の岡村さんは、スター気質なのでそれを俯瞰して笑いにもっていける姿勢がとても好きです。やべっちFCに出演させてもらった時にも、周りを引き出していて凄さを肌で実感しました。
うわっ、この人天才って思った人は、フットボールアワー後藤さんです。「うちのガヤがすみません!」の収録で、打ち合わせなしでも的確なツッコミを入れてくれて、安心感が半端なかったです。
あと、NSC時代に同じクラスだったEXITの兼近はとても不思議な感じで、ワンピースのルフィみたいな雰囲気がありました。負のオーラを一切感じなかったですね。
コンビ結成の理由
NSC時代は、仲は良かったけど別々のコンビでした。相方のコンビは、ずっとツッコミが足りていない状況で、お互いのニーズと解散時期が一緒だったことが大きな要因だと思います。とりあえず、現状を変えないといけないと思って結成したのが、今思うと良かったかな。相方も自分もまだまだ欠点だらけですが、お笑いは不思議で、悪いところが収録で面白さに変わることがあります。素材をそのままにしておくのもアリだなとも考えています。
今後の目標
「世界の果てまでイッテQ!」に重宝されたい(笑)。
過酷系(寒い・熱い・キツイ・無人島)のロケに呼ばれたら自分らの良さが出ると思っています。自分は体育会系で、相方は真逆で活躍できる。
「サッカー芸人=松下シュート」 このイメージを広くに定着させたいですね。冠番組は、やべっちFCみたいな番組を持ちたいなと思っています。
芸歴が上になっても、どんどんロケに出ていきたいですね。
1日のスケジュール
例
平日(例)
5:30起床
6:30-8:30サッカー
9:30帰宅
12:00 -14:00 お昼ごはん、リラックスタイム
15:00-16:00 オーディション、打ち合わせ
17:00-19:00 ライブ
土日(例)
9:00 劇場入り
9:30 集合、リハーサル
11:00 ライブ
13:00 ライブ
14:00-17:00 収録
15:00-18:00 収録
19:00 サッカーの試合
モチベーションの保ち方
おもしろ荘から2、3か月の間、色々仕事が増えてきたのに、緊急事態宣言で仕事の枠がなくなっていった時期はとてもつらかったです。1度売れるのを経験してからすぐに仕事がなくなったのを体感し、7年目でやっと希望が見えたと思っていたので余計につらかったです。
正月には、自分たちのことはもう忘れられていると切り替えて、オーディションや番組のオファーなど、どんな仕事でも絶対に全力で取り組むことで自然とモチベーションは上がってきました。
芸人と素人の差
芸人は、空気を読むプロです。「もうそれいいよ」とか、飽きられていないかの察知が超早いと思います。相手の思いを察知して、ボケたりツッコんだりしているので、めちゃくちゃバカは、逆にすごいと思う。自分は、相方にどう落とすか常に考えています。
MCや番組スタッフが何を求めているのかを察知する。そういうところは、サッカーに似ているかも(笑)。
インテルビローバってどんなチーム
元の名前は、東大ユナイテッドでしたが、気が付いたら東大の人がいなくなっていました(笑) 都1部では、珍しく練習がないチームだから自主性がものすごく大事。良い意味でも悪い意味でも試合の日にその人が1週間何してきたかわかります。
ずっと相手にペースを握られても試合の中で改善することをやってきて、そこは強みですが、両極端なチームで、勢いが爆発するとすごいけど、合わないときはとことん合わないです。メンタルの話がほとんどで戦術的な話は、あまり無いです。
年齢の幅は広く、30代から大学生までいるけど、体育会のノリがおもしろいし、ガツガツ系の人がほとんどでチームメイト同士も仲が良いです。
仕事の話は、あんまりしないので、そこは気分転換にもなります。
社会人サッカーのレベル感
先日、東京国体の練習に参加しましたが、めちゃくちゃレベルが高かったです。強度は当たり前に高いし、さらにみんなめちゃくちゃ走れる。自分の自信があった体力面で、差を見せつけられました(笑)
個人的な意見ですが、都1部と都2部で決定的に違うのは、プレー強度の点だと思います。
学生時代に、もっと上のカテゴリーと戦った時は、そんなに差を感じなかったので、昔よりもレベルは格段に上がってきていると思います。
社会人サッカーの良さ
お金がもらえるわけではなく、いつやめてもいい環境の中で、試合に出られないと練習に来なくなるのが普通だと思います。だから、リザーブやメンバー外の選手が、チームに関わろうとする姿勢が良いチームが強いイメージです。皆、仕事や家庭があるので、主軸が来られないときでも今いるメンバーで結果を残さないといけないし、どんな状況でも勝たなければならないのが社会人サッカーの面白さだと思います。
最後に
今回は、吉本所属のお笑い芸人、松下シュートさんにお話しを伺いました。 短い時間の中で、僕たちでも感じ取れるくらい「お笑い」に対してのストイックさが伝わってきました。さらに、幼少期から夢中になっていたサッカーが、プロサッカー選手という形でなくても、 仕事+趣味ではなく「サッカー芸人=松下シュート」という仕事×仕事になっていてとても魅力的に感じました。これからのライフプランを考えるきっかけとなり、とても有意義な時間となりました。
社会人サッカーというものは、他に何かをしながら活動できるという良さがあります。インテルビローバのようなチームは「平日は仕事で忙しくてサッカーなんて出来ない」なんて方でも少ない時間で真剣に高いレベルでサッカーに向き合える環境なのではないでしょうか。